ニューヨークに住む現代アートのコレクター夫妻を追った
ドキュメンタリー『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』(2008年)と
現在公開中の続編『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』(2013年)をご紹介します。
1作目 『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』
主人公のヴォーゲル夫妻はごく普通の市民。
夫のハーブは郵便局員、妻のドロシーは図書館司書です。
二人は「気に入った作品であること」
「自分たちの給料で買える値段であること」
そして「小さなアパートに収まるサイズであること」を条件に、
約30年をかけて2000点以上ものアート作品を収集していきます。
日々ギャラリーやアーティストらを訪ね歩き、話し、交渉し、
少しずつ我慢強くお気に入りの作品を買い集める二人の姿は、
本当に頭が下がる努力、言い換えれば気が遠くなるような風景です。
まだ値段の安い新人アーティストの作品と正面から向き合い
審美するハーブの姿がとても印象的です。
やがて時が経ち、二人のコレクションは世界屈指のものへと膨らんでいきます。
映画はアメリカ国立美術館から依頼を受け、
アパートに収まりきらなくなった2000点以上のコレクションを寄贈するまでを追っています。
予告編はこちらから→ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人
監督は日本人の佐々木芽生さんです。
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後編 『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』
二人がアメリカの国立美術館、ナショナル・ギャラリーに2千点を越える作品を寄贈したのが1992年。
それから16年、コレクションは5000点近くまで増え、
もはやナショナル・ギャラリーには収蔵しきれなくなってきた2008年春、
二人はある計画を発表して世界を驚かせました。
「ドロシー&ハーバート・ボーゲル・コレクション 50作品を50州に
(50×50フィフティ・バイ・フィフティ)」
と名付けられたこのプロジェクトは、
全米50州の各美術館に50作品づつ、合計2,500点を寄贈するというもので、
アメリカのアート史上、前代未聞のスケールのものです。
後編ではコレクションを受け取った全米各地の美術館や地元のさまざまな反応、さらに2人のその後の人生を描いたものとなっているようです。(すみませんまだ未見です。)
これだけのコレクションを1つも売らず持ち続けるなんてミラクルです。
1点でも売れば裕福な暮らしと新しいコレクションが手に入るでしょうに。
予告編・上映館・タイムスケジュールなどはこちらへ→ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの 公式サイト
この映画は、クラウドファンディング(インターネットを利用した小口の資金援助)を利用し、アメリカ730名、日本915名の参加により 撮影、制作、配給、宣伝費用を調達したとのこと。このような新しい試みによって製作されていたのですね。素敵です。
作品プロモーションのため、つい最近までドロシーさんは日本に滞在されていました。
77歳にして、京都観光、大阪・福岡や東京でのトークショーなど、精力的に活動されていたようです。
なかでもニューヨークでもお気に入りだった吉野家をテイクアウトして上野公園でお花見したり、
あとは大阪で食べたお好み焼きを絶賛してトークの聴衆にすすめていたとのこと。かわいい。