こんにちは!
雨、寒いですね。
大人の本棚シリーズの本が最近、また入っています。
このシリーズは活字も大きめで読みやすくて、表紙の触った感じも良い。
枕元に置いて、黄色っぽい灯りで読みたくなるような本が多いんですね。
”古本屋の若き主人、佐古啓介が、謎めいた恋や絡みあう人間模様、古本に秘められたそれぞれの「事情」を解き明かしていく。本に重なり合う若さの痛み、ひとりの青年が成熟へと至る道筋を鮮やかに描ききった、異色の青春小説。”
今年、直木賞を受賞された佐藤正午さんが解説を書かれていますが、それを読むと、佐藤さんは若いときに『諫早菖蒲日記』を読んで感銘を受け、野呂邦暢にファンレターを送ったことがあるそうです。
「野呂邦暢から届いた返信のほうは、小説用の原稿用紙一枚に、明るい青のインクで書かれたのびやかな文字が躍っていた。…野呂邦暢は、君はまだ若いから、目と歯の丈夫なうちにもっとたくさんの本を読んだほうがいい、みたいな助言を書いてくれていた。」
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鮮やかな記憶ですね。でも、肝心のその返信の手紙が残っていないそうです。本や、ファンレターを書いたことを記してある手帳なんかは大切にとってあるのに、どうして手紙の現物が手元にないのか、佐藤さんは疑念を抱きます。「目と歯の丈夫なうちに」という文面も、老人が言うならともかく、野呂邦暢はその時40歳なのです。
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「1978年の学生手帳には「野呂邦暢から返信」と書き込みがあるにはあるけれど、それはそう書かれているだけの話で、実のところは、当時の青年の頭の中にあった予定(十日くらいで返信が届くかもしれない)、もしくは強い願望(届いてほしい)が、カレンダーに鉛筆で記されているに過ぎない、とも考えられる。」
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そして、返信は白昼夢かもしれなかったというのですが、そんな混乱した記憶と情熱的な思い入れを持つ自分のことを、小説の中の人物のようにあっさりと、ごく自然に描写している、そんな文章が素敵だなと思いました。小説家は小説のように生きている、ように見えます。
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「こうだと言い切れるのは、二十一歳の僕が『諫早菖蒲日記』をはじめて読む野呂邦暢の小説として読んだ事実、それを皮切りにして他の小説を探し続け、白昼夢と現実の区別もつきがたいほどに野呂邦暢の小説を読みふけった事実、そしてそれらの本をいまもそばに置いているということだ。」
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この「愛についてのデッサン」を読んだら、古本屋「佐古啓介」のエピソードが記憶に混在してしまいそうです。少し読んでみると、細部が真近なもので、楽しいです。そういえば古本屋さんの小説って読んだことがない。
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