新宿・歌舞伎町にある解体予定のビル全部を使った展覧会に行ってきました。(すでに会期は終了しています)
アーティストはト「Chim↑Pom(チンポム)」、男女6人組のアートユニットです。いま現在の日本における刹那を現代アートで表現している若者たちです。
展覧会のタイトルは『また明日も観てくれるかな?』。
「笑っていいとも!」最終回のラストで、いつものようにタモリがこの言葉を視聴者になげかけたことから、未来のありかたへの問いかけとしてつけられました。スクラップ&ビルドをテーマとし、日本の“青写真の描き方”を模索するとのこと。舞台となったビルは1964年に完成した歌舞伎町振興組合ビルで、すでに立ち退いたラーメン二郎の看板が残されています。
長蛇の列の中順番が近づくと「万が一事故があった場合は自己責任」との書類に署名を求められます。ワクワクしますね。
この展覧会では地上4階から地下1階までを丸ごと使った作品で、はじめに4階までエレベータであがり、階段を使って下まで見て回るという流れとなっています。
最上階になる4階は真っ青に彩られ、床の真ん中には四角い穴が開けられています。そこから1階まで覗くことができます。柵や注意書きなどは一切なく「自己責任」です。ドキドキします。
作品の名前は「青写真を描くversion2」。
壁に感光材を塗り紫外線で焼き付けるという手法で『日本の未来をどうやって描くか』という問いかけを行っているとのこと。
すでに消滅していると思われる店舗や会社での集合写真、時計などが焼き付けられ、この町の過去の隆盛を思い起こさせます。
3階には「歌舞伎町」をテーマにした展示となっており、カラスを扇動し集めた脅威の映像作品「Black of Death」が映写され、その奥にはピカチュウに扮した巨大リアルドブネズミ(毒餌の効かない新宿産「スーパーラット」)が遊んでいる歌舞伎町のジオラマがあります。とてもよくできてます。
よくみると今回の『明日も観てくれるかな?』のエリィさんの写真や、お友だちのホストの人たちの写真が広告然として貼ってあります。
歌舞伎町にうずまく性欲をエネルギーに変換する装置『性欲電気変換装置エロキテル5号機』。
「媒体問わずエロい広告にそれらしき文言と電話番号を掲載。広告を見た不特定多数の成人男性からかけられた電話の着信電波を、センサーによって感知して発電させる仕組み。」 残念ながら観覧している間に着信はありませんでした。
ホストのみなさんの女性への営業トークの音声がバックに流れ、彼らに理想の女性像をテーマに描いてもらったドローイングを展示物として共存させ、ギャップを楽しむ展示。
2階にあるのは、64年の東京五輪にあたって行われたハイレッド・センター(高松次郎・赤瀬川源平・中西夏之の頭一文字から名付けられた60年代の前衛芸術グループ)による「首都圏清掃整理促進運動」のパロディーで、清掃機器としてのルンバが絵具を与えられ、描き続ける巨大絵画です。せっせと動き続けるルンバがいとおしかったです。
ラストは「ビルバーガー」という作品が1階部分に置かれていました。3階分の床をバンズにして、それぞれのフロアにあった家具や照明器具などを具にしたハンバーガーという楽しい作品。なんとなくトマトやレタスもあります。ダイナミック。
いままで数回彼らの展示を見ましたが、今回が一番しっくりきました。うまく言えませんが。パルコの前のでっかいゴミ袋とかも好きです。
これらの展示はメンバーのエリイさんがモデルやタレント活動をして7年かけて貯めた資金で実現したプロジェクトと聞き、心があたたまりました。もっとお金が集まって元気な若者がたくさんアートができるといいなと思います。
(神谷)