すでに会期が終了してしまっておりますが、
大伝馬町のアートギャラリー「みうらじろうギャラリー」で開催されていた
「追悼 合田佐和子展」(会期2016年6月18日-26日)に行ってまいりました。
タイトルにあるとおり、残念ながら今年2月にご逝去された合田さんを悼む展覧会です。
合田佐和子さんは1940年10月11日生まれ。
武蔵野美術学校(現武蔵野美術大学)卒業後、瀧口修造の勧めによりオブジェ作品を発表し、デビューします。その後 唐十郎主宰の劇団状況劇場・唐組、寺山修司主宰の天井桟敷の宣伝・舞台美術などを手掛け、立体オブジェや絵画の他、版画・写真・ドローイングなどを制作し、各地で個展などを開催しました。
この展示では絵画、写真、版画、鉛筆画、オブジェで構成されていました。会場で写真は撮りませんでしたので、中でも印象に残った作品3点をご紹介します。
会場でまず目を引いたのは2003年に渋谷松涛美術館で開催された
「合田佐和子 影像」展の図録の表紙となった「90度のまなざし」という絵です。
画像からも伝わりますが、実物は神々しく画面から光を発しているようです。思わず手を合わせて拝みたくなる美しさ。
この魅惑の瞳の持ち主ポーラ・ネグリはサイレント映画時代に活動し、妖艶なヴァンプ(悪女)役で大スターとなった女優です。全体が霧のかかったような薄い色調の絵ですが、まぶたの際の三角形が不思議に美しい効果を発揮しているようです。
ネグリ自身のエピソードも面白いので、もしご興味のある方は調べてみてください。
最後は少女の姿に猫の顔の部分がコラージュのように描かれた作品です。(一見、ワニのように見えたのですが違いました。)この絵の暗さがとても魅力的で、寝室に飾っておいたら眠れない時や、気持ちがざわつく夜などに鎮静剤のような役割をしてくれそうな気がします。
会場の真ん中のテーブルには、いまでは手に入りにくい合田さんの著作や掲載誌なども自由に閲覧できるようになっていて、ずっと欲しいと思っていた『オブジェ人形/手芸文庫7』(1965年)も手にとって見ることができました。この本は「手芸文庫」というシリーズに組み込まれていますが、中をみると相当な現代美術ぶりを発揮しています。それでありながら「手芸」であるので、全ての作品の作り方が記されている最高の本なのです。(材料は身近にある針金やピンポン玉・ガラスビンなどの廃材を使用。)この本を見て真面目にこれらの奇妙な人形を「手芸」として作った読者がいたと思うと、とても温かい気持ちになります。
この本には合田さんが世に出るきっかけを作った瀧口修造と詩人の白石かずこの言葉も掲載されています。豪華です。
合田佐和子さんは図録を除くと薄いテーマ別の作品集は数冊ありますが、体系的な作品集が出ていないので(もうどこかで話が進んでいるかもしれませんが)是非お願いしたいところです。
(神谷)
今回の合田佐和子さんの画像をみうらじろうギャラリー様よりご提供いただきました。ありがとうございました。
みうらじろうギャラリー
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