先日入荷した書籍で、ちょっと気になるものがありました。
「中国の文人画家の近代 豊子愷の西洋美術受容と日本」という単行本です。
中国美術には滅法うといので、豊子愷という名前すら聞き覚えがなかったのですが
何気なくページをめくっていたら“竹久夢二”の文字が!
気になって前書き部分を読んでみると、
“日本で竹久夢二の作品に出会い、その「東洋的画趣」に感銘したことが、抒情漫画豊子愷誕生のきっかけになった、とよく指摘される。”
と書いてあるではないですか!
夢二の影響、というと“夢二式美人画”の流れを汲む中原淳一や蕗谷虹児などの抒情画家しか思い浮かばなかったのですが、
初期の頃の夢二は、社会主義の新聞に諷刺画などのコマ絵を数多く描いているので、こうした作品に影響を受けた画家がいてもおかしくないですよね。
盲点でした。
豊子愷は、市民の日常を描いた作品に影響を受けたようです。
豊子愷はこの「クラスメート」という作品を目にしたとき、社会の不平等と人生の悲哀を感じたと言います。
その衝撃は深く、十数年後でさえも、この絵の細部まで記憶に留めていました。
中国という国の状況ゆえに、この絵から格差社会、不平等というものをより深く感じとることが出来たのではないでしょうか。
豊子愷も、同じテーマの絵をいくつも描いています。
この絵を見たとき、食生活の違いで体格に差がついてしまった二人、なのかと思ったのですが
実はそうではなく、 経済的な理由で適正年齢で学校に行けない子どもたちがいるということを表したものでした。
このように、夢二の多大なる影響を受けた豊子愷ですが、皮肉なことに彼は夢二の美人画を見たことがなかったようです。
こういうかたちで夢二の影響を受けた画家がいたということをはじめて知り、まさに目から鱗な思いでした。
竹久夢二の書籍等はこちらからどうぞ!
夏目書房では、様々なジャンルの本・版画等を買取しています。
お売りいただけるものございましたら、是非ご連絡ください。
買取の詳細はこちらから。