今回は現代音楽家ヤニス・クセナキスをご紹介します。
Iannis Xenakis(1922-2001)
ヤニス・クセナキスはルーマニア生まれのギリシャ系フランス人で20世紀を代表する現代音楽家です。そして建築家ル・コルビジェのもとでスタッフとして働いていた経歴をもち、建築家としての側面も持ち合わせています。各分野で多くの実績を残していますが特筆すべきは彼の壮絶な経歴です。
第二次対戦時、ヤニスは20代でギリシャ国内の反ナチス・ドイツのレジスタンス運動に加わります。このときに顔の左側に銃弾を受け、左目を失い、左頬に大きな傷を負い死線をさまよいます。この後も反政府左翼活動を続け、幾度もの投獄を経て、とうとう死刑判決を受けてしまいます。しかし彼はギリシャ脱出を決意し、フランスに亡命することに成功します。
亡命した後、建築家ル・コルビジェの工房で設計担当として働く傍ら、パリ音楽院で現代音楽の巨匠オリヴィエ・メシアンのもとで作曲を勉強し始めます。しかし音楽院でなかなか成果を残せないヤニスに師であるオリヴィエはこう助言しました。
『あなたは数学を知ってる、なぜそれを作曲に利用しないのか』
この言葉がヤニス・クセナキスの現代音楽家としての人生をスタートさせました。
ヤニス・クセナキスの音楽の特徴は、数学や物理法則を取り入れコンピューターで作曲したことです。彼は高度な物理、数学理論を用いてコンピューター演算により音楽を作りました。
人間の手作業では、不可能な領域を数学論で統計し作られた音楽は大自然のうねりともいえる巨大で暴力的なノイズを含んでいます。
ここで現在ボヘミアンズ・ギルドにあるヤニス・クセナキスの作品をご紹介します。
ヤニス・クセナキス Xenakis: Synaphai/Aroura/Antikhthon
Iannis Xenakis
1976年/The Decca Record Company UK版 LP1枚 冊子付 SKCOー74201
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ヤニス・クセナキス Metastasis/Pithoprakta/Eonta
Iannis Xenakis 高橋悠治ピアノ
1965年/Le Chant Du Monde LP1枚 シミ
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ヤニス・クセナキスの代表作2枚でどちらもアナログレコード作品です。1枚目は1969年に作曲された『SYNAPHAI』、『ANTIKHTHON』と71年の『AROURA』が収録されています。おどろおどろしい古代的な空気に満ちている作品で、恐怖すら覚える、その圧倒的な世界観はまさにクセナキス独特のものです。まるで神々の世界に迷いこんだかのごとく壮大な音を生みだしています。
2枚目は初期の管弦楽曲2曲「メタスタシス」「ピソプラクタとピアノと5管の傑作アンサンブル曲「エオンタ」が収録されています。ここではクセナキスに師事した日本の作曲家、高橋悠治の美しいピアノの旋律を聴くことができます。
クセナキスのポリトープ Xenakis/Les Polytopes
オリヴィエ・ルヴォ=ダロン 高橋悠治訳
1978年/朝日出版社 函 クセナキス全作品解説付
オリヴィエ・ルヴォ=ダロン著、作曲家高橋悠治によって翻訳された書籍です。音楽家、建築家、デザイナーと様々な顔を持つクセナキスの軌跡を記録した価値のある一冊です。クセナキス全作品の解説が付いており、クセナキスが残した膨大な作品群を知ることができます。素晴らしい装丁は杉浦康平の手によるものです。
ヤニス・クセナキスの音楽は彼の多様な経歴のエッセンスが反映されており、特に壮絶な戦争体験から受けた影響は多分にあるといえます。それは少なからず狂気を含んだ彼の音楽から感じ取ることができます。
活動家、建築家、そして現代音楽家として人生を渡り歩いてきた彼の音には、人生で培われた全てが凝縮しています。ぜひ一度クセナキスの音楽を聴いてみてはいかがでしょうか。経験したことのない新しい世界観を楽しめるかもしれません。
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