こんばんは♪
古本祭りが無事終了致しましたので前回に引き続き、タイポグラフィの書籍のご紹介をしていきたいと思います。
今回はヤン・チヒョルトの「書物と活字」を♪
ヤン・チヒョルトは1923年、21歳の頃にバウハウスの展覧会に訪れてからモダンデザイン主義に傾倒、積極的に活動をはじめます。
そして1928年に出版した「Die neue Typographie」によって、モダンデザイン主義の第一人者となります。
サンセリフ以外のフォントを否定し、アシンメトリーを推奨、左右対称のレイアウトを攻撃しました。
チヒョルトは1930~32年にかけて、「トランジット」「ゼウス」「サスキア」 の3つの書体をデザインしました。
しかし「ゼウス」は古典的な書体「アンシアル」と極めて近いということに気づかされます。
どんなに新しい試みで書体を創作しても、その根底は常に古典書体のデフォルメであるということをチヒョルトは自覚していきます。
戦後しばらくはイギリスのペンギン・ブックス社でブックデザインの改善に務め、「the Penguin Composition Rules」として文字組のルールを作ります。監修したペーパーバックは500種類以上にも渡りました。
そして1952年、「書物と活字」を発表します。
この書籍は「Die neue Typographie」とは一転、伝統的な書体を全面的に擁護するものでした。
また個性的で目新しい書体を容赦なく批評したチヒョルトは、近代主義者たちの怒りを買い、バウハウス出身のマックス・ビルからは「過去を売った男」との烙印を押されました。
しかしチヒョルトは、そのような批判に対して“若気のいたり”との一言。
180度意見を変えながらも、恥ずかしがる様子を微塵も見せず堂々と今の自分の意見を主張する姿は、驚くと同時にカッコイイとさえ感じてしまいました。
「書物と活字」は美しい書体を多数紹介(冒頭写真参照)し、その利用法を提示した“書体の教科書”であり、同時に書物としても美しいものです。
極度のこだわり屋のチヒョルトがだした本ですから、 そりゃあ細部まで手が抜かれてませんよね。脱帽!
そして何よりこの本で私が楽しんだのは、チヒョルトの批評でした。
手加減なしの評価ですが、的を射たチヒョルトのことばには、ユーモアのセンスさえ感じてしまいます。
タイポグラフィに興味がない方も、ご覧になってみては如何でしょうか♪
一見の価値ありますよ!
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